例会報告

情報産業エルム会 2月例会の報告

平成20年2月13日18時30分からJR有楽町駅前「交通会館」、札幌市東京事務所にて開催されました。

<例 会 内 容>

1.研修会 講演テーマ「OSのセキュリティ強化について」

講師: NTTデータ技術開発本部 原田季栄氏(s60工応物卒)
 原田氏 室蘭市生まれ札幌東高校卒

 NTTの一期生として横須賀研究開発センタに配属後、平成元年発足したNTTデータに移籍。 MITでのマルチメディアオーサリングシステムの開発、デジタル放送関連のシステム開発などを経て、 2003年よりオープンソース開発プロジェクトを指揮する。「使いこなせて安全なLinux」を 目指すことで 知られるTOMOYO Linuxのプロジェクトマネージャ。


〜〜〜 講演内容 〜〜〜

 携帯電話やデジタルテレビなどでオープンソースのOSであるLinuxの採用が 加速度的に進んでいます。「SELinux」に代表される「セキュアOS」技術は OSのセキュリティを強化するためのもので、今後重要となる分野です。


 = OSの脆弱性はバグ = 

(1) Linuxはオープンソースで無償でダウンロードできるが、OSの脆弱性によりサーバー乗っ取り、データ改ざんなどが
   近年報告されている。

(2) OSの脆弱性とは「バグ」であり、もっとも知られている脆弱性は「バッファオーバーフロー」。

(3) 脆弱性を衝かれることによりサーバのシステム管理者権限を奪われてしまうと、何でも出来てしまう。

(4) 管理者権限を奪われる可能性はゼロに出来ないので、奪われても完全に自由にはさせない、クラッカーの思いどうり
   にはさせない・・・
     これがOSセキュリティ強化の基本。

   
 = MAC(Mandatory Access Control) = 

(5) 「強制アクセス制限」(MAC)という手法を適用することでセキュリティ強化できる。
   ファイルやディレクトリを含めた資源に対するアクセスを・例外なく、監視して、判断し、問題ない場合だけ許す。
   ・・・この判断基準を「アクセスポリシー」=アクセスを許す許さない場合の条件を定義したものの集合体=という。

(6) Linuxセキュリティ強化は「強制アクセス制御」を組み込んだカーネルを標準のカーネルと取り替えることで
   行なわれる。

   
 = 「セキュアOS」・「SELinux」 = 

(7) 「セキュアOS」の起源は情報漏洩防止にある。それはポリシーに基づきアクセスを制御する」ことにより実現され、
   クラッキングの抑止と被害の軽減、データの改ざん防止も可能にする。それらがセキュアOSの一般的な効能。

(8) セキュアOSはアクセス権限を細分化することで、例え侵入されても影響範囲が限定されるようにすることなどで
   セキュリティを向上させたもの。SELinuxなどが代表的だが個々のプログラムやファイル,ユーザーにアクセス権限を
   割り当てる「ポリシー」の作成、編集が煩雑なことが課題となっていた。

   
 = 「TOMOYO Linux」 = 

(9) 原田氏の所属するNTTデータで開発、公開しているTOMOYO Linuxは「学習モード」で、ユーザーが実行したプログラ
   ムやアクセスしたファイルを記録し、自動生成されたポリシーを適用することで、学習モードで実行された操作以外を
   禁止することができる。ポリシーはテキストとして生成されるので編集することも可能。

(10) NSA(米国National Secvurity Agency)の開発したSELinuxは機能的には強力であるが、その概念と設定の難しさか
   ら利用が浸透していない。「学習モード」を備えたTOMOYO Linuxであれば標準的なスキルを持つ管理者であれば
   誰でも運用が可能。

(11) TOMOYO Linuxは、Linuxのカーネルと呼ばれる膨大なプログラムの改造として実装されており、現在メインライン化
   (開発成果をLinuxカーネル自体の中に含めること)に取り組んでいる。メインライン化を行うことにより、作業成果は
   Linuxの中で生き続け、そのとき初めてプロジェクトとしてのLinuxへの貢献が実現される。

   
<参考>
・ TOMOYO Linux関連情報 
・ 原田氏の活動記録(個人Webページ) 


2.定時総会と新入会員・ゲストの方の紹介
初参加の方々

 ・兵頭智明氏  (日本デジタル研究所)
 ・宇治原里志氏 (株)IBMビジネスソリューション(H2経)
 ・松本明彦氏  (株)NTTデ−タ(H5.法)
 ・前田嘉也氏  (株)エスグラントコ−ポレーション(H5.工)

 

 

 

3.懇親会、その他の様子

例会では、講演会のあとはいつも懇親会で、一杯やりつつお互いのビジネス情報の交換や、新しい方との名刺交換をしています。


   懇親会での情報交換の様子